砂の女
1962年刊行
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砂の女
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に沈んでいく一軒家に閉じ込められる。脱出を試みる男と、砂掻きという労働を淡々と受け入れる女、そして穴の上から二人を見張る村の人々。まるでアリ地獄に捕まったアリのように、男は抗い続ける。読者レビューには「口の中がジャリジャリしてくる」という言葉があるほど、砂の描写はリアルで生々しく、読んでいるだけで息苦しさが積み重なっていく。しかしこの作品の真の恐ろしさは砂そのものではなく、閉塞した環境に人間がどう順応していくか、その過程を容赦なく描いた点にある。ブラック企業、宗教的な従属、現代社会のあらゆる不条理に置き換えられる普遍的な不安が、この作品には宿っている。どんな状況にも慣れ、意味を見出してしまう人間の慣習性と脆さ。逃げ出せるはずなのに逃げない男の結末は、読者それぞれに深い余韻と問いを残す。世界24か国以上で翻訳された、芥川賞作家による読売文学賞受賞の長編傑作。
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